お口の中の状況は、長い人生の中で少しずつ変化していきます。
今回は、虫歯のリスクとライフステージ(人生の段階)の中の妊娠中〜幼稚園時代について書きたいと思います。
妊娠期〜乳児期:
妊娠中のお子様は、お腹の中にいるのでもちろん虫歯にはなりません。ただし、これから生まれてくる子供の口の中には、お母さんとお父さんのお口の中の細菌が移ることがわかっています。
お子様を妊娠中〜歯が生えてくる6ヶ月頃までに保護者の方(お父さん、お母さん、必要があればおじいちゃん、おばあちゃんも)のお口の中に虫歯や歯周病が無いようにしておきましょう。
お母さんが定期的にクリーニングを受けているお子様とお母さんがクリーニングを全く受けていないお子様を比較すると、3歳までの虫歯本数に明らかな差が出ることが研究でわかっています。
乳児期〜離乳期:
子どもを寝かしつける時に哺乳ビンにミルクやスポーツドリンク、乳酸菌飲料、ジュースなどを入れて飲ませると、そのままでは、寝ている時は唾液があまり出なくなりますので、乳歯の前歯がボロボロになってしまう様にムシ歯が出来ます。これが哺乳ビンムシ歯です。哺乳ビンをくわたまま眠らすことは絶対にしないようにしてください!
粉ミルクや母乳でも1歳を超えて寝かしつけに使っていると虫歯になることがあるようです。
どうしても哺乳ビンを使って寝かせたい場合は、1歳を超えたお子様には白湯や麦茶など、虫歯のリスクを上げない飲み物を入れるのが理想的です。
生後19〜36ヶ月:
生後19〜36ヶ月は最も虫歯菌が住みつきやすい時期です。(window of infection)
生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には虫歯菌はいませんが、乳歯が生えてくると、生後19〜36ヶ月の期間に虫歯菌が家族内、特にお母さんからの感染が多いことが解かっています。そのため子育に関わる家族みんなが虫歯のない清潔な口を保つことが重要です。
虫歯菌(特にミュータンスレンサ球菌)は糖分を多く取ると歯に付着しやすくなりますので、この時期には特に甘いもの(飴や飲み物など)をだらだらと長い時間与えることはやめてください。
乳歯が生え始めてきたら、お子様に対する虫歯予防が本格的に始まります。
1日2回、朝ご飯を食べた後、晩ご飯を食べた後フッ化物入りジェルを子供用歯ブラシに付けて歯磨きをしてください。このとき無理やりしっかり歯磨きをする必要はありません。
フッ化物ジェルは美味しいので、通常お子様は喜んで歯ブラシをくわえます。しばらく歯ブラシをくわえさせて遊ばせた後、嫌がらない範囲で仕上げ磨きをしましょう。
フッ化物は、虫歯に対する特効薬のような物ですが、子供の時に使いすぎると永久歯が斑状歯というまだら模様のついたような状態になってしまうことがあります。歯磨きジェルを歯ブラシにつける1回量は、米一粒くらいにしましょう。
3歳までに削らなければいけないような虫歯が1本でもできてしまうと、80歳の時までに20本以上の歯を残すことがかなり難しくなることが、研究でわかっています。1本でも虫歯ができてしまったお子様は、高リスク群と考えて、できる限りの虫歯予防をしたほうが良いです。
歯医者さんでの高濃度フッ素、毎日の歯磨きフッ素ジェル、シーラント、食生活改善、キシリトール、カルシウムペーストなどを、かかりつけの歯医者さんと相談しながら効率よく利用しましょう。
6歳臼歯が生えてくる頃:
6歳臼歯は乳歯の奥に生えてくる最初の永久歯です。歯ブラシや唾の流れが行き届きにくいため歯垢がたまりやすくなります。
また石灰化がまだ十分できていないので虫歯に非常になり易い時期です。
また形態的にも溝が深く複雑なので早く虫歯になりやすい場所です
6歳臼歯の虫歯予防には専門家の定期的(1年に3〜4回)な管理と、家庭において確実な歯ブラシが必要です。また,フッ素入りの歯磨材剤を正しく使用してください。
カリエスリスクの高い場合や歯の溝が深く複雑な場合には予防的に蓋をする処置(シーラント処置)も考える必要があります。
高濃度フッ素が一生のうちで一番効果あるのが、6歳臼歯が生えてから、乳歯の交換が終わるまでの時期です。
年齢的にも親の手が離れ始め、小学校に上がりますと親の手綱も緩みがちです。
歯と歯の間磨き(糸磨き:フロッシング)は、年齢的にまだ無理がありますので寝る前の仕上げ磨きの後に必ず実行して下さい。
寝る前の仕上げ磨きの後にはフッ素ジェルを使ってください。
フッ素ジェルを使った後は、うがいをしない方がフッ化物が口の中に残って効果的です。
それぞれの年代で注意の仕方があるので、家族も含めて効果的な虫歯予防を実践しましょう!
調布市 西調布ハーモニー歯科クリニック
川上壮